国家公務員の人事評価結果は S・A・B・C・D の5段階ですが、現状はAとBが大勢を占め、CとDは極めて少ない。公表されている平成23年度の国家公務員の能力評価の結果を見ると、Sは5.8%、Aが53.8%、Bが39.8%、Cが0.5%、Dが0.1%です。では、地方公務員はどうか。まだまだ国公準拠の考え方が生きていますので、必然的に自治体職員の評価結果もこの分布に近い状況です。
なぜ、このような結果になってしまうのでしょうか。
「年功序列型人事から抜け出せない温情型の組織文化に原因がある」という方もいれば、「評価基準が甘すぎるからだ」という方もいます。また「そもそも国家公務員は選ばれた人材だから評価が高い結果になるのは当たり前である」といった、まるで、世の中の人々と比べて評価してよいかのような暴言を吐く方までいます。
しかし、私が今すぐにでも、改めてもらいたい原因は、処遇への反映の仕組みにあります。実は評価者が「C」を避けざるを得ない現実があるのです。
下の図を見てください。これは国家公務員の昇給への反映の仕組みです。国家公務員の場合、過去1年間の評価結果(業績評価2回、能力評価1階)に応じ、図のようにして昇給ランク(昇給は A・B・C・D・E です。「S」からはじまる評価ランクと異なります)が決まります。
図の上の「S・S」「S・A」「S・B」等は、2回の業績評価の結果です。縦の「S」、「A」等は能力評価の結果です。この縦横の組み合わせにより、1位グループ、2位グループや3位グループなどグループ化を行うことができます。
そして、上位グループの者から順に昇給区分が「A」(昇給号俸数は8号俸、ただし全体の5%以内)、次に昇給区分がB(昇給号俸数は6号俸、ただし全体の20%以内)、次に・・となるよう決定します。
さて、この図の昇給区分(上図の下)の「C(標準)」を見てください。この標準の4号俸を維持するためには、少なくともすべての評価において「B」が必要です。年3回の評価のうち1度でも「C」評価になると、昇給区分は下位ランクの「D」になり、昇給額は標準の半額(2号俸)になってしまいます。
評価者はこの仕組みを知っています。評価者は部下の成績がやや不満が残る結果であっても、また能力を見て「まだまだ力不足」と思っても、1回「C」をつけると「標準の半額」以下が決まります。ほとんどの評価者は意図して「C」評価を避けている可能性が高いと思われます。
また、仮に前期の業績評価で「C」になってしまえば、後期にいかに素晴らしい成果をあげたとしても、標準より下の昇給額に甘んじなければなりません。年度内には敗者復活はできません。
評価が偏っているときには、複数の原因が絡んでいるケースがほとんどです。しかし、まずはこの古い仕組みにメスを入れておかないと、たとえ優れた手を打っても効果は低いものになってしまうと思われます。
現在、内閣官房において「人事評価の改善に向けた有識者検討会」が開催されています(令和3年2月現在)。この件も含めて、評価結果の是正に関する改善策を提示してほしいと期待しています。